EASE-UP® Sシリーズ/種子研究用機器

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EASE-UP® (イーズアップ) Sシリーズ/
種子研究用機器

「空気の力」を利用して、
極小の種子を運ぶ
進化を続ける「シードピッカーオート」

遺伝子組み換えなど植物を扱う実験につきものなのが、極小の種子を移動する作業だ。長さ0.2~0.5ミリの種子を扱うため、単純で地道な作業でありながら細心の注意を要する。開発した種子用真空ピンセット「シードピッカーオート」は、空気の力を利用して、自動で種子を一粒ずつ播種・配列できる装置だ。

開発ストーリー

“柔軟な発想が、開発を前進させた”

設計課森 哲也

“長さ0.2ミリの種子を正確かつ簡単に移動したい”

「植物の種を、形を損なわずに、正確に扱える機器がつくれないか」。植物の研究に取り組む大学の研究室から、ある企業を通して依頼が寄せられたのは、2013年ごろのことだ。この依頼が、「シードピッカーオート」の前身である、手動の種子用真空ピンセット「シードピッカー」を開発するきっかけとなった。

実験で使用する植物の種子(長さ0.2~0.5ミリ)

実験で使う植物の種子の容器などへの移動は、通常、学生らが手作業で行う。単純な作業のようだが、長さ0.2~0.5ミリの種子を一粒ずつ、少量ずつ運ぶのは難しい。ピンセットでつまむとつぶれてしまい、迅速に作業を行おうとすると一度に多くの種子をつかんでしまう。もっと簡単かつ正確に作業を行うことが求められていた。

“種子を一粒ずつ運べるシステムを考案”

設計課の森哲也は、さっそく機器の開発に乗り出した。「掃除機のように種を吸う仕組みにすればよいのではないか」。それなら、工夫次第で種を一粒ずつ運ぶことができる。だが、どのような器具で種を吸引すればよいのか。掃除機のような構造だと音がうるさいし、工業用のポンプは大きすぎる。試行錯誤する日々が続いた。

だがある時、出かけた先で熱帯魚の水槽に取り付けられたエアーポンプを見てひらめいた。「小さくて軽い種子を吸うのなら、これぐらいの大きさで十分なのではないか」。空気を送るのではなく、空気を吸うタイプのポンプを探したところ、市販品で適当な大きさのものが見つかった。「これでつくってみよう」

“吸引ノズルにくっついた種子を離すには?”

しかし、装置の製作に取り掛かったところで、問題が生じた。実験で使う植物の種子は非常に小さくて軽いため、一度、吸引ノズルの先端にくっついてしまうと、なかなか離れないのだ。ほんの僅かでも水気と静電気があろうものなら、まったく落ちなくなってしまう。どうにかして解決できないか。悩みは深まるばかりだった。

吸引ノズルの仕組みは独創的なものになった

森たち開発スタッフは、ひたすら考え続けた。そしてひらめいた。「ポンプで吸引している種を、空気の力で吐き出せば、スムーズに種が離れるのではないか」。先端がペンのようになっている吸引ノズルで種子を吸いつけ、手元のボタン操作で種子を吐き出す。そんな仕組みで動く「シードピッカー」を完成させた。吸引ノズルの針を狙った場所にスムーズに持っていけるよう、重心のバランスも工夫した。

熱帯魚飼育用のポンプを活用して完成させた「シードピッカー」

“手動から自動へ 進化は続く”

「シードピッカー」の開発で、次に目指したのは自動化だ。種子が入った容器から一粒だけを取り出して、決められた位置へ正確にまいていく。種子を入れる容器はすり鉢状になっていて、底の方から突き上げられた一粒の種を、吸引ノズルで吸いつけて運ぶ。その後は容器を振動させ、次の種子を取り出しやすくする。また、容器の素材は、滅菌効果が望めるステンレスを採用した。

すり鉢状の容器の底から種を突き上げて取り出す

「96 ウェルプレート」等へ自動で種子を配置できる

現在は、自動で動く「シードピッカーオート」の試作機を完成させ、実際の現場で使ってもらい、意見をもらっている。1回完成すれば終わり、ではなく、研究室や企業などさまざまなところで使ってもらって評価をもらい、進化させていくのだ。
そして、森は語る。「うちの会社の強みは小回りが利くところです。お客様の求めに応じて、柔軟に、きめ細やかな対応ができます。今後も改良を続け、精度を高めていきたい」開発の道のりは続く。