EASE-UP® Cシリーズ/細胞培養装置
Case1
EASE-UP® (イーズアップ) Cシリーズ/
細胞培養装置
最先端の医療研究を支援する
「小型で安価な三次元細胞培養装置」を実現
細胞を平面ではなく、立体的に培養する「三次元細胞培養」が、再生医療の研究現場などで注目を集めている。圧力や酸素濃度、流速を制御しながら細胞を培養するという「三次元細胞培養装置」の開発に着手。試行錯誤を重ね、研究に必要な機能を維持したうえでの小型化に成功した。
開発ストーリー
“産業用装置の製作で培った技術を理化学機器へ”
“三次元の細胞を培養できる装置を造ってほしい”
始まりは、2013年ごろだ。京都府の産業の創出やベンチャー支援などを行うプロジェクトを通じて、ある大学の研究室から「三次元の細胞を培養できる装置を造ってほしい」という依頼があった。再生医療の研究現場に適した細胞培養装置がなく、困っているという。
これまではなかなか縁がなかった分野だったが、ものづくりのプロを自負する会社として、チャレンジしてみる価値のある案件だった。当時、新たに取り組む事業を模索していたこともあり、研究室の協力や支援を得ながら、開発に着手することが決まった。
“研究室のスペースの問題に対応”
開発に取り組んだのは、設計課の小長谷節だ。最先端の理化学機器ということもあり、「最初は分からないことも多く、苦労しました」と苦笑する。大学の研究者らと綿密な打ち合わせを重ね、三次元細胞培養装置にはどのような機能が必要か、どういった構造が適当なのか、を探っていった。
研究室のニーズは、「小型で安価な細胞培養装置」だった。当時、市場に出回っていた三次元細胞培養装置は大型で高価なものが多かった。これらの装置は、一般的な大学の研究室や研究所などに配備されているインキュベーターに装置を入れると、大幅にスペースを取ってしまうことが悩みだった。
“小型で安価な細胞培養装置の開発に成功”
スペースを取らないよう、いかに小さく、安価なものつくるか、がカギだった。最初に造った試作機の大きさは、現在の2倍。もっと小さくする必要があった。だが、やみくもに小型化を進めては、性能が落ちてしまうこともある。試行錯誤の日々が続いた。
そこで思いついたのが、バランスを調整しながら、一つ一つの機構を小さくすることだ。小長谷は言う。「小さくなっても必要な機能を維持できるよう、それぞれの機構の配置を工夫して設計しました」。試作機を製作しては評価を繰り返し、当初の半分の大きさまでの小型化に成功した。
インキュベーター内に収まるよう小型化した
装置をクリーンベンチの中に入れて分注を行う
小型化した三次元細胞培養装置
“さまざまな研究で成果を出してもらえるように”
「この大きさなら、市場で受け入れられるのではないだろうか」。研究室で使ってみてもらったところ、「必要としていた実験に対応できた」とうれしい評価をもらえた。現在は、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の研究や動物臨床実験などに使われている。細胞を立体的に培養できる装置は、再生医療だけでなく、創薬の研究でも重宝される。
小長谷に、現在の気持ちを聞いてみた。「産業用機械が専門の会社で、本当に実験器具が造れるのかなという気持ちがありましたが、完成して非常にうれしいです。さまざまな分野での研究成果につながっていってほしい」 今後も、現場の研究者らの声をフィードバックしながら、装置を改良していくつもりだ。
「生体内環境近似三次元細胞培養装置の開発」
研究開発成果等報告書 より
研究開発の結果
細胞近傍の圧力・流速及び酸素濃度を制御できる三次元細胞培養装置を開発し、クアーズテック製の培養基材と組み合わせ、積進・クアーズテック・京都大学でヒトiPS細胞や間葉系幹細胞等の培養を行いその効果を実証した。また、培養時の細胞塊近傍の溶存酸素濃度を測定し、培養液中の酸素濃度を制御する方法の効果を実証した。
〈ヒトiPS細胞〉
- 酸素制御無
- 酸素制御5%
- 静置培養